* “髪は生きている”という発見
「なぜこんなに体に悪いものが世界中に広まり
受け入れられているのだろうか。
もっと体にいい、髪を傷めないパーマ液はないだろうか」
来る日も頭の中はこのことばからです。
いままで読んだことのない化学の本をかたっぱしから読んでも
なかなか納得いく答えはありません。
そんなとき、ふと、化学とはまったく関係ない
農業を営む田畑の情景があざやかによみがえってきたのです。
豊かな土壌に育つイキイキとした農作物、風にそよぐ稲穂。
そのとき突然ある考えが浮かんできました。
「そうだ、髪の毛だって生き物なんだ。
ひょっとしたら農作物と同じことなんかじゃないかしら?」
するとそれまで感じていたいろいろな疑問がスー;つと解けてきたのです。
農作物と同じだったら髪は生き物なんだから
髪が嫌がるようなことをやっちゃいけない
髪が喜ぶことだけやればいいんだ
お百姓さんが一生懸命土を耕し肥料をやり、豊かな土壌を作るからいい作物ができる。
髪も正しい手入れをし、健康な頭皮を作ってやればイキイキした髪の毛が育つのだ・・・と。
弱酸性パーマ液の開発のきっかけは
この「髪は生きている」ということの確認から始まりました。
それから閉店後、自分の髪の毛を抜いてパーマ液に浸し
それを顕微鏡で眺める日々が続きました。
その頃お店は本郷に近かったので
常連のお客様には東大の先生の奥様方がたくさんいらっしゃいます。
そして幸いなことに
奥様方のご主人を通して先生を次々に紹介してもらうことができました。
さらに知りたい一心でしつこく食らいついてゆく熱心さにあきれながらも
先生たちはいろいろ知識を与えてくださったのです。
「髪は生きているのなら、髪にも地肌にもいいパーマ液でパーマをかければいいのだ」
そう気づくのに時間はかかりませんでした。
そして研究を続けるうちに、どうやら髪にいいということは
酸性かアルカリ性かが重要なポイントになることに気づいたのです。
髪の毛を抜いてコールドパーマ液に浸すと
たちまち膨潤という現象が起きます。膨潤というのは
「各細胞の体積が増加して広がっていき、ついには壊れていく現象」をいいます。
これは腐敗の一歩手前の状態で
かして潤いのあるみずみずしい状態をさすのではありません。
ここに新鮮なみかんがあるとします。
皮はつやつやに光り適度な固さもあります。
皮をむくと」ぴっちり実が詰まっていてみずみずしく
いかにもおいしそうです。
しかしこのみかんを水の中に入れて2,3日おくともかんは水を吸ってふくれ
柔らかくなります。
そのままそっとしておけば見て目は形を保っていますが
ちょっと突けばたちまちくずれてパーッと水の中に散ってしまうでしょう。
これが「膨潤」した状態なのです。
同様に、たんぱく質が主成分の髪の毛や皮膚にアルカリ溶液をかけると
たちまち膨潤という現象が起こります。
地肌の一つ一つの細胞が膨潤現象を起こすと
組織はくずれ、毛穴は詰まり
その結果頭皮はたるんで顔にはシワが寄ってしまうのです。
でも皆さんは、「そんなに脅かしたってダメ。
皮膚にアルカリ性の溶液がついたくらい何でもないじゃない?」
というでしょうね。
ではこんな実験をしてみましょう。